去る2024年3月7日午前9時15分、
私は東京都昭島市にある東日本成人矯正医療センター正面玄関に立ち、そこから空を見上げた。
薄曇りの空だった。
昨日も一昨日もこの空を見上げていた人なら、
「あー、どんよりしている」なんて溜息をつきながら思うのだろう。
でも5年振りの鉄格子のない空を見た私には
それはとてもとても眩しくて、
薄目を開けて遠くの景色を見つめるのが精一杯だった。
ああ、私は出所したんだ。
思い返せば東京地裁での判決の日、
2019年3月31日も曇り空だった気がする。
判決で懲役4年6ヶ月罰金6000万円を言い渡され、
東京拘置所に収監された。
そして6月の下旬にこの施設へ移送されて、
私は5年間を刑事施設で生きてきた。
世の中はこの5年で大きく進み、ありとあらゆることが進化してきただろう。
でも私という人間はあの日あの時ののままで止まっている。
大切なあの人この人もきっとこの5年で大きく変わったのだろう。
でも私の記憶の中の皆んなは、5年前のままだ。
早く世の中を見てみたい。
早く皆んなに会いたい。
玄関を抜け、駐車場へと歩んだその先には
5年振りのアクリル板の無い父と母の姿があった。