東京拘置所に誰か近しい人が入れられたら、ぜひ差し入れをしてあげてください。
拘置所にいる人のただ唯一の楽しみであり心の救い天の光となるのが差し入れです。
*未決拘禁者
未決というのは「まだ決まっていない人」
大多数は検察に起訴された人と裁判中で判決が確定していない人で身柄の拘束が必要とされる人。被告人。
レアキャラとして地検特捜部に逮捕された被疑者と麻薬取締官に逮捕された被疑者。
*既決拘禁者
既決というのは「いろいろ決まった人」
裁判で実刑となるとまず暫しのあいだ拘置所に入ります。その人たちと拘置所で未決拘禁者の世話などをする受刑者。
*死刑囚
死刑囚は未決死刑囚(上告中又は再審請求中)と確定処遇者などに分かれるらしいです。
拘置所にはこのように3種類の拘禁者がいますが私の経験をもとに未決を前提にお話します。
まずは、接見禁止が出ているかどうかが重要です。
裁判所から接見禁止が出ていると、弁護人又は弁護人になろうとする人しか面会や物品の授受ができません。
弁護人とは、裁判所にこの人の弁護人になりますと書面を提出した弁護士。
弁護人になろうとする人は、すなわちまだ書面を出していない弁護士。
このときは手紙もダメです。本人には届きません。
周囲の人が本人を支えたくても支えるすべがありません。
ただひたすら接見禁止の解除となることを待つのみです。
もし一部解除になってしまったら、接見禁止対象の中に自分が入っていないか確認をしてください。
接見禁止が解除されるOR接見禁止が無い場合は一日に一組だけ面会が実現します。
だいたいの場合、収容者が弁護人に誰それに会いたいと言いますので弁護人から面会できますか?と連絡が入るかと思います。
私の弁護士から、こちらから会いたいと言っても拘置所のような場所には行きたくないと面会を拒否されることもたまにあると聞かされました。
頼む…色々あったんだろうけど…この時だけは水に流して会いに行ってやっておくれよ…泣
一人ではなく一組のため、両親はokです。友人三人連れもok。
これは一般面会と言います。
弁護人面会は別になりこちらは制限はありません。
一般面会は混雑具合により面会時間は10分だったり15分だったり。
刑務官が拘禁者側に一名が立会い、横に座って何か書いています。面会のやり取りを記録することもあるし、何か他の適当な内容をメモしたりもしているよう。
差し入れは、主に面会の際に持参するか郵送にて可能です。
拘置所一階に差し入れ受付の窓口がありますので、そこから誰それさんへと差し入れをします。
郵送は拘置所の住所と差し入れたい人の氏名で届きます。郵便局からでもクロネコ佐川も着払いでない限り何でも届く気がします。
差し入れできる品は決まっています。
そして差し入れできる品でも、拘置所内の購買や売店で購入するものと自前で用意して良いものがあります。
購買指定のものは購買で注文支払いすれば、そのまま差し入れになります。
一回あたりの差し入れできる数も決まっています。例えば書籍は一回に3冊。
細かい区分になっていますし、差し入れ受付のおばちゃんが
「これって…?はい、キャミソール」
と雪の降る凍える日に腹巻きをNGにしたり、「これ半袖?長袖シャツでしょ。長袖はもう一回の量を超えたからこれはダメ」
したりしたので、特に女性の差し入れはデザインに凝ったりしたやつは差し入れに相応しい品かどうかにおいてベリーデンジャラスです。
ユニクロとかトップバリュとかの装飾無しでおばちゃん達に非常に分かりやすい超保守的なThis is スタンダードなもので何卒お願い致しますm(_ _)m
なので、一番失敗しない方法は
まず無難な雑誌や本を3冊差し入れすると同時に手紙を同封して、差し入れして欲しいものを直接本人に聞くのがベストと思います。
又は面会で聞く。
何の本が良いか迷ったら、文庫で有名人の短めのエッセイ集が良いです。
宮藤官九郎のエッセイ
会社のスタッフから最初に差し入れされた本です。
文庫だと起床前に目が覚めてしまったとき横になりながら読めるし、内容もクスッと微笑む明るい話が多くて心が慰められました。
いきなり江原さん特集のスピリチュアルな雑誌とか、あなたの幸せを天の神々は見守っています的な壮大な本を送るのは…
拘置所内は完全なる拘禁状態のため未決の人にこういう内容は現実的でないというか地に足がつかないというか…
むしろ見える何かの地に足を着けたい気持ちなので、こういう内容は否定的に捉えて腹立たしくなってしまうんです。
空想というか具体的にイメージ出来ない内容の本については、むしろ身の上が決まって心が定まった人に良いんじゃないかと思います。死刑囚の方とか…
死刑囚の方は本当に素晴らしい絵を描かれたりしますし。心定まればまた共に心は遠くに昇ってもゆくこともできるのだと、私は思います。
ちなみに、主任弁護士からの最初の差し入れは、ルソーの社会契約論でした。
弁護士は、面会の日みずからの勉学の為に鞄に忍ばせていたこの本を、帰りがけ私に差し入れたのでした。
わたしは、人間をあるがままのものとして、また、法律をありうべきものとして、取り上げた場合、市民の世界に、正当で確実な何らかの政治上の法則がありうるかどうか、を調べてみたい。
人間は自由なものとして生まれた、しかもいたるところで鎖につながれている。自分が他人の主人であると思っているようなものも、実はその人々以上にドレイなのだ。どうしてこの変化が生じたのか?わたしは知らない。何がそれを正当なものとしうるか?わたしはこの問題は解きうると信じる。
冒頭の文章です。
私は拘置所の独房で、真の民主主義を18世紀のルソーと共に考えていました。
未決拘禁者への差し入れで、非常に有り難かったものを記します。
座布団
→一応貸し出しもありますし収容者が中で自腹でも買えますが、およそ座布団とは呼べない。拘置所の購買指定のものをお願い致します。中では椅子は無く床に座布団です。
まず、最初に欲しいです。
布団セット
→貸し出しもありますがせんべい布団で腰が痛く、且ついつのもの?くらい年季が入った貸し出し毛布は防火毛布みたいで切なくなります。
布団は購買指定。セットで五万円を超え非常に高額です…何か手打ち?布団らしいです。
布団が高すぎるならせめて毛布だけでも差し入れお願いしますm(_ _)m
毛布はタテヨコの長さ指定はありますが、家の毛布を持ってきてもok!馴染んだ毛布は安心できます。
ジャムパンとクリームパン
→購買窓口で注文すると毎日一つづつ付近の工場の手作りが差し入れされます。
例えば3つ注文すれば、三日間一つづつ差し入れされます。
手作りの美味しさ。
中で自腹でもパンは買えますが、全部山パンです…
お菓子
→全く口にしない人は不要ですが、そうでない人は癒しの甘いものになります。お菓子類で酒のつまみ系もあります。
いかのくんせい的な。
売店指定です。だから定価だよね。
果物
→売店のおばちゃんに聞くと、中で買えないものを教えてくれます。
参考までにリンゴは差し入れウェルカムですが刑務官が皮を剥いてくれる訳もないので丸齧りですよ。
タンパク質の高いもの
→食事では全然足りません。ちなみに炭水化物はまた炭水化物⁈というくらい充実しています。
差し入れは、一日に数回、刑務官がキャスター付きワゴンで各部屋に届けます。
独房で下手すると一日中ほとんど立たない喋らない日もあるので、差し入れがあると立ち上がって品を受けとることができますし刑務官と少しの会話もあります。
何よりも差し入れ伝票に受領の指印を押すときに差し入れ者の名前を見ることができ、その人を思いしのぶ数少ない機会になります。
この瞬間が、本当に人間らしい気持ちになれる。気持ちが正気に戻ってきます。
悲しいことですが、拘禁されると時間と共に次第に人間らしい気持ちを失っていきます。
感情が沸き起こってこない感じ。
それを振り戻す力があの伝票にはあるような気がするんです。
拘置所で味わうものは行ったことのない人には絶対に分かりません。
無理です。
分かるわけないしむしろ分からない方がいいんです。